小唄Q&A

小唄について

Q:小唄と端唄の違いを教えてください?

A:端唄は江戸時代中期に江戸市中で好まれて唄われた大衆はやり唄で、小唄の母体となるものです。小唄に比べると表現の仕方はあまり技巧的ではなく、撥弾きであるため華やかです。小唄は江戸時代後期、端唄から派生しすでに独立していた歌澤節(端唄に比べるとスローテンポの曲調)のあと、清元お葉によって創始されたものです。その特徴は、端唄とも、歌澤とも曲調を異にした、早間拍子の三味線を主としたもので、唄も軽妙洒脱な江戸前の唄い方が、当時の江戸っ子の共鳴を呼んだようです。現在「江戸小唄」といわれているものです。

Q:浄瑠璃(常磐津、清元等)と小唄との違いを教えてください?

A:簡単に言うと浄瑠璃というのは三味線音楽における「語り物」の総称と思ってください。歴史は古く15世紀に遡ります。それに対して小唄は「唄い物」です。法師唄に始まり地唄、江戸長唄、端唄といった流れになり、清元お葉により「江戸小唄」となります。

Q:小唄の魅力は一言でいうとなんでしょうか?

A:まず「短い」ということでしょうか。短い中に「粋といなせ」を摂りこみ、なんともいえぬ情感のあるものです。テンポの速い今の時代に適した音楽です。是非折がありましたらお聴きください。

Q:小唄には多くの流派があるようですが、それぞれに特徴がありますか?

A:現在はおよそ60流派ほどあります。清元お葉(天保11〜明治34)、その弟子の横山さきまでは流派はなく、大正時代の初めから横山さきの弟子達の中から、堀派(堀小多満)、田村派(田村てる)小唄派(小唄幸兵衛)、蓼派(蓼胡蝶)、吉村派(吉村ゆう)春日派(春日とよ)といった流派が誕生しました。現在ある流派は殆どがその流れといってよいでしょう。それぞれ大きな違いはありませんが、清元お葉の意図する、三味線本位で、どちらかというと唄を従とした早間系を踏襲する流れと、時代の流れから舞台を意識して、唄の割合を多くもとめ、三味線を従的考えとした流れとがあります。

Q:小唄は通常二曲唄うようですが、何か理由がありますか?

A:江戸小唄初期の小唄は早間で、小座敷で唄っているうちは良いのですが、だんだん広い場所で披露することが多くなると、1曲では短いため俗に、「小唄二題」といわれるようになりました。情感のあるものを最初に、2曲目は三下り物の軽妙洒脱なものを付け変化をつけたりもします。近代になり3分、4分といったものが作曲されるようになってからは1曲の演奏も多く見られます。

Q:演奏上心がけていることはありますか?

A:短い演奏時間の中で、いかに内容を表現するかということが一番大事なことで、短いがゆえに一番難しいことでもあります。

Q:小唄の三味線はなぜ撥を使わないのですか?

A:お葉の江戸小唄は、当初弾き唄いを建て前として、三味線も他の邦楽同様撥を用いていました。それが明治中期爪弾きに代わったのは、小唄が舞台唄ではなく名士富豪通人たちの粋な小座敷で唄われたこと、遅い時間の三味線の音をはばかったためと考えられますが、他流派(他ジャンル)との違いを意識したことも根底にあったと思われます。そして江戸小唄の爪弾きも、時代を追って(肉弾きに)変わり、音色も軽く美しいものに進歩していき、三味線の弾奏技巧上で新しい境地を開いたというわけです。

Q:小唄は唄が主ですか三味線が主ですか?

A:晩年お葉が、小唄の弟子に口伝したことによれば、小唄は三味線のもので、唄は妻だから節をつけずふんわりと温和に唄い、三味線に間をうまく合わせて、言葉とおり唄に表情を表すものだといっています。江戸小唄は歌詞でなく、三味線の弾き方と唄いかたにその特徴があるということで、それが当時の「難し好き」を満足させたようです。しかし、時代の推移とともにお座敷から劇場へと演奏の場が変わってくるにつれ、唄と三味線のバランスは徐々にその割合は変化し、現在は劇場での演奏に映えるよう、唄が主で、三味線は従とした演奏が多いようです。

お稽古について

Q:見学あるいは体験できるところはありますか?

A:すべての先生ができるわけではありませんが、可能な先生もいらっしゃいます。小唄連盟事務所にお問い合わせいただくか、或いはお近くに三味線屋さんがありましたらお聞きになってみるのもよいと思われます。

Q:三味線だけのお稽古は可能でしょうか?その場合お三味線を持っていくのでしょうか?

A:不可能とはいえませんが、邦楽は唄と三味線のバランスが、大事ですので、唄を先にお稽古されることをお薦めします。お三味線は、どのお稽古場にもほとんどありますのでお持ちになることはありません。

Q:グループレッスンは可能でしょうか?

A:原則的にはマンツーマンのお稽古です。カルチヤーセンター等で可能なところがある場合もあります。

Q:お稽古日は月何回くらいでしょうか?

A:先生によっても違いはありますが、通常は月4回のレッスンが多いようです。

Q:お月謝はどのくらいでしょうか?

A:一般的お月謝は10000円〜が多いようです。(入門時は入門料が発生します。基準は月謝1カ月分が相当です)

Q:お休みしたときのお月謝はどうなりますか?

A:学校、各種教室と同様とお考えください。お月謝は発生します。長期お休みの場合は先生とご相談するのがよいでしょう。

Q:お稽古は着物(和服)を着ていかなければいけないのでしょうか?

A:お稽古に服装の決まりはありません。お着物に興味をお持ちの方は、着る機会はありますので結構楽しいと思います。

Q:お稽古は正座をしなくてはいけないのでしょうか?

A:正座に慣れない方、或いは正座のできない方には他の方法もありますので、先生にお確かめいただくとよいと思います。

三味線

Q1;小唄の三味線の特徴はどういうところですか?

三味線は、日本を代表する弦楽器で、16世紀末頃琉球貿易により大阪・堺に入った中国の三弦が改良されて三味線になったとされています。基本的には撥(ばち)を用い演奏しますが、小唄では、爪弾き(つまびきorつめびき)といい、指で弦を弾いて演奏します。三味線本体は「天神」「棹」「胴」から構成されており、ほかの三味線音楽と変わりはありません。

Q2;三味線の材質を教えてください?

三味線の楽器本体は、固くて緻密で比重の高い木材で作られています。現在は紅木(こうき)が多く用いられ、ほかに紫檀(したん)・花梨(かりん)などがあります。また樫や桑が用いられたこともあります。胴の部分はほとんどが花梨製です(以前は桑や欅もありました)。胴に張られている皮は、楽器が渡来した当初は蛇皮が使われていましたが、三味線の普及につれ蛇皮入手困難の理由から、猫(または犬)皮が用いられるようになりました。

Q3;糸は何でできていますか?

三味線に張られている三本の糸は絹(絹の撚糸を糊で固めたもの)製です。ゆえに、独特の響きを生じますが、微妙な糸の伸びがあるため、演奏者は常に音の調整を求められます。代用として人絹(テトロンやナイロン)製が使われることもあります。太い順に「一の糸」「二の糸」「三の糸」と呼びます。

Q4;音の出る仕組みを教えてください。

三味線の先端の「天神」部分には「糸蔵」という空間部分があり、三本の「糸巻き」によって糸(弦)が巻き込まれています。三本の糸は「糸蔵」から「棹」を経て「胴」下端の「中子先」に、「根緒」という太い組紐で作られたものに結んで固定されています。そして音を出すためには、弦の振動を胴皮に伝える「駒」を装着しなければなりません。「駒」は平素取り外されており、演奏時に糸と胴皮のあいだにはさみます。「駒」の材質は、紅木、象牙などで、小唄では紅木が多く使われています。

Q5;「忍び駒」とは何ですか?

胴をあまり振動させない弱音専用の「駒」で、大きな音をはばかる場所、あるいは夜分などに使われます。

Q6;「さわり」とは何ですか?

一の糸の振動に特色ある高次倍音を強調して添える仕組みで、一の糸の乳袋部分表面の微妙な凹凸「さわり山」によってその効果が生じます。一の糸が振動すると、その上端部分がさわりの山「凸」に触れ独特の響きが生まれます。「さわりがつく」=響くとは、一の糸だけではなく二の糸、三の糸も共鳴をして音色に味をつける効果があります。その効果は一の糸と協和音程になる音高ほど高く、不協和音程ではほとんどあらわれません。基本の調弦には「本調子」「二上り」「三下り」の三種が、とくに多く用いられます。曲によって二の糸、三の糸を上下させ調弦します。

Q7;三味線の保管で注意することはありますか?

三味線は湿気に弱く、梅雨時など湿度が高い時期には皮が破れやすくなり、また糸は天然素材ですので伸縮し、音が濁ります。通常は湿気の少ない直射日光の当たらない場所に保管しましょう。

Q8;三味線の携帯は長いままですか?

本来は棹全体が一体である延棹(のべざお)ですが、現在は収納、携帯のためはめ込み式に細工し、三つに分割できる継棹(つぎざお)がほとんどです。

Q9;三味線の棹の太さに種類があるのは何故ですか?

三味線音楽の各ジャンルは発生や歌唱法もそれぞれ独特ですので、それに適した音色の三味線が用いられます。棹の太さは三種類あり、細棹(ほそざお)・中棹(ちゅうざお)・太棹(ふとざお)、とに分けられます。小唄は、端唄から派生した経緯から、当初は細棹が使われていましたが、その後清元の影響もあり中棹が好まれるようになりました。